児神経内科・アレルギー科
ノロウイルス感染症は、子どもたちの激しい嘔吐や下痢を引き起こす急性胃腸炎の主要な原因ウイルスの一つです。
乳幼児からお年寄りまであらゆる年齢層に感染するため、しばしばご家族みんなで次々と胃腸炎を発症することが見られます。
ノロウイルスは一年中発症しますが、特に 秋から春にかけて (12月から3月頃がピーク)大流行することが知られています。
ノロウイルス (Norovirus) は、1968年にアメリカのオハイオ州ノーウォークの小学校で発生した集団胃腸炎の患者の便から発見されました。
当初は地名にちなんでノーウォークウイルスと呼ばれていましたが、現在ではノロウイルスという名称で定着しています。
ノロウイルスはカリシウイルス科に属するウイルスで、抗原性の異なる 30種類以上 が見つかっているため、何度もかかる可能性があります。
このウイルスは、食中毒を引き起こすウイルスとしても最も頻度が高く知られています。
潜伏期間は 半日から2日(24~48時間)嘔吐で始まることが多く、嘔吐を繰り返すのが特徴的です。
その後、吐き気を伴いながら下痢が出現します。
発熱を伴うこともありますが、通常は 軽度 であり、多くは1日程度でおさまります。
その他、腹痛、頭痛、筋肉痛、倦怠感などが見られることもあります。
症状は発症初日に最も強く現れますが、通常は 1~4日 で自然に回復していきます。
しかし、乳幼児や高齢者の場合は、激しい嘔吐や下痢により 脱水症 を起こし、点滴による水分補給が必要になることがあります。
ノロウイルスは感染力が非常に強く、ごく少量のウイルスが体内に入るだけで発症します。
感染経路は主に以下の通りです。
感染者は症状が回復した後も、 約1週間 (あるいはそれ以上)便の中にウイルスを排出し続けます。
ノロウイルス感染症の確定診断には、便を検体とした 抗原検査 やRT-PCR法などがありますが、通常、小児科では流行状況や症状からウイルス性胃腸炎であると推定し、必要に応じて検査を行い、対症療法を開始することがほとんどです。
ノロウイルスに対する特効薬(抗ウイルス剤)や予防接種は現在ありません。
治療は、症状を和らげながら自然治癒を待つ 対症療法 が中心となります。
嘔吐や下痢はウイルスを体外へ早く排出するための身体の防御反応であり、自己判断で下痢止め(止痢薬)を服用させるのは回復を遅らせたり腹痛を激しくしたりする可能性があるため、推奨されません。
最も大切なのは脱水対策です。
嘔吐を誘発しないよう、水分は一度に大量に与えず、ポカリスエットやOS-1などのイオン飲料を、 スプーン一杯程度の少量ずつ、15分ごとなどこまめに 与え続けます。
冷たい飲み物は胃腸を刺激しやすいため、常温か温めたものを与えましょう。
嘔吐を恐れて絶食を続けると、脱水が進行する恐れがあるため注意が必要です。
吐き気が改善したら、お粥、うどん、ソーメンなどの炭水化物や、バナナ、すりおろしたリンゴ、プリンなど、消化の良いものを与え始め、乳製品や油物は避けてください。
お子様を寝かせるときは、吐物がのどに詰まったり肺に吸い込まれたりするのを防ぐため、 横向き に寝かせましょう。
ノロウイルス感染症は、学校保健安全法で「その他の感染症」に分類されており、集団生活においては出席停止の措置が取られることがあります。
嘔吐や下痢の症状が続いている間は自宅で休養し、 症状がなくなり、食欲も回復するまで は、保育園、幼稚園、学校などの集団生活はお休みすることが推奨されます。
症状が治まっても、便中にウイルスはしばらく排泄されるため、通園・通学再開後も毎日の手洗いや消毒を継続することが大切です。
ノロウイルスはエンベロープ(脂質の膜)を持たないため、一般的なアルコール消毒が効きにくい性質があります。
塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)を用いた適切な処理が感染拡大を防ぐ鍵です。
トイレの後、おむつ交換の後、食事の前には、石鹸と流水でしっかりと手洗いを行います。
石鹸はウイルスを死滅させませんが、洗い流す効果があります。
処理時には使い捨ての手袋やマスクを着用し、汚染箇所には新聞紙やペーパータオルを被せ、その上から 1000 ppm の次亜塩素酸ナトリウム消毒液をかけて拭き取ります。
嘔吐の際、ウイルスはエアロゾル化して広がるため、周辺 2メートル四方 を消毒し、その後水拭きしてください。
トイレの便座、ドアノブ、水道の蛇口など、家族が触れる場所は 200 ppm の消毒液で徹底的に拭き掃除をしましょう。
トイレで水を流す際は、ウイルスが舞い上がるのを防ぐため、 蓋をしてから流しましょう 。
症状が軽快に向かっている場合は自宅でのケアが中心となりますが、以下のような場合は速やかな受診が必要です。
福山市のおひさまこどもクリニックでは、ノロウイルス感染症に対し、有効な抗ウイルス剤がないため、 脱水予防を中心とした対症療法 を行います。
お子様の状態を評価し、脱水が疑われる場合は、点滴(輸液)による水分補給を行います。
また、嘔吐が強い場合は吐き気止めを、下痢に対しては整腸剤を使用する場合があります。
感染拡大を防ぐため、受診の際は受付にお声がけいただき、適切な場所(隔離室など)で速やかに診療を進めます。