このようなご相談は、当院でもよくいただきます。
赤ちゃんの皮膚に現れる、赤くて盛り上がったアザ。
その多くは「いちご状血管腫(正式名称:乳児血管腫)」と呼ばれるものです。
いちご状血管腫は、皮膚の毛細血管が異常に増えることでできる「良性の腫瘍(できもの)」です。
表面がイチゴの実のようにブツブツと赤く盛り上がって見えることから、この名前で呼ばれています。
乳児の約 1~2%に見られる、決して珍しくない疾患です。
特に、女の子・低出生体重児・多胎児(双子など)に多い傾向があります。
いちご状血管腫には、非常に特徴的な「時間の流れ」があります。
この経過を知っておくことが、適切なタイミングでの治療判断にとても重要です。
生まれたときには何もない、あるいはうっすらとした赤みや白っぽい斑点だけのことが多く、生後数日から数週間経ってから、赤いアザとして目立ち始めます。
生後 1~2 ヶ月頃から急速に大きくなり始め、生後 5~6 ヶ月頃までに最も大きくなるのが一般的です。
この時期に、色が濃くなり、こんもりと盛り上がってきます。
保護者の方が最も心配される時期でもあります。
1 歳を過ぎる頃から、徐々に色が薄くなり、平らになっていきます。
5~7 歳頃までに、多くは自然に目立たなくなります。
いちご状血管腫は、確かに多くの場合、時間とともに自然に小さくなっていきます。
そのため、以前は「様子を見ましょう」と経過観察のみを勧められることが一般的でした。
しかし、注意していただきたいのは、「自然に消える」といっても、必ずしも元通りのきれいな皮膚に戻るとは限らないという点です。
大きく増殖した血管腫が退縮した後には、以下のような跡が残ることがあります。
特に、お顔・首・手など、人目につきやすい場所にできた血管腫の場合、成長したお子さまご自身が見た目を気にして悩まれるケースも少なくありません。
以下のような場合は、できるだけ早く医療機関にご相談ください。
目のまわり(まぶた)にできている
→ 視界を遮ることで、視力の発達に影響(弱視・乱視)を及ぼす恐れがあります。
鼻・口・のどのまわりにできている
→ 呼吸や授乳の妨げになる可能性があります。
急速に大きくなっている
→ 増殖期の勢いが強い場合、後遺症を残しやすくなります。
表面がジュクジュクしている、潰瘍(かいよう)ができている
→ 出血や細菌感染のリスクがあり、痛みを伴います。
おむつが当たる部分や、こすれやすい部位に多く見られます。
顔面など、目立つ場所にある
大きさが 5cm を超えている、または複数個ある
→ まれに内臓(肝臓など)にも血管腫がある場合があり、精査が必要なことがあります。
現在のいちご状血管腫の治療において、最も重要とされているのが「治療開始のタイミング」です。
血管腫が急速に大きくなる増殖期(生後 1~5 ヶ月頃)に治療を開始することで、その後の増大を抑え、後遺症を最小限にとどめることができます。
逆に、「大きくなるのを待ってから」「1 歳を過ぎてから考えよう」としてしまうと、すでに皮膚が伸びきってしまい、後から治療しても跡が残りやすくなってしまいます。
「気づいたときが受診のタイミング」です。
生後 1~2 ヶ月の乳児健診の際などに、ぜひお気軽にご相談ください。
現在、いちご状血管腫の治療の第一選択とされているのが、プロプラノロール(ヘマンジオルシロップ)という飲み薬による治療です。
もともと心臓や血圧の治療に使われていたお薬ですが、血管腫を縮小させる効果が確認され、2016 年から日本でも乳児血管腫の治療薬として保険適用されています。
このほか、症状や部位に応じて、レーザー治療や外用薬、経過観察といった選択肢もあります。
当院は小児科・小児外科を標榜しており、赤ちゃんの皮膚のできもの・アザについてのご相談を数多くお受けしています。
いちご状血管腫が疑われる場合、当院では以下の対応を行います。
いちご状血管腫なのか、それとも別の血管性病変(単純性血管腫、静脈奇形など)なのかを見極めます。
似たような赤いアザでも、疾患によって経過も治療法も全く異なります。
部位、大きさ、増殖のスピードを評価し、「経過観察でよいのか」「積極的な治療が必要か」を判断します。
プロプラノロール治療やレーザー治療が必要と判断した場合は、適切なタイミングで連携医療機関へご紹介いたします。
赤ちゃんの体にできた赤いアザは、保護者の方にとって大きな心配の種です。
どうか一人で抱え込まず、まずは私たちにお話を聞かせてください。
診察の結果、経過観察で問題ないと判断できれば、それだけでも安心していただけるはずです。
そして、もし治療が必要な場合には、最も大切な「治療のタイミング」を逃さずに、次のステップへとつなげることができます。
お子さんの未来のために、早めのご相談をお待ちしております。